レーザー洗浄の仕上がり比較:パルス(PLC)とCW(LCW/CLC)

結論

同じサビ取り・塗膜剥離でも、パルスレーザー(PLC)は金属本来のシルバーに、CWレーザー(LCW・CLC)は落ち着いたガンメタ色に仕上がります。

違いを生むのは熱の入り方です。パルスは極めて短い光を断続的に当て、母材に熱をためずに汚れだけをはじき飛ばします。CWは光を当て続けて熱で汚れを焼き飛ばすため、表面にごく薄い酸化膜が残り、ガンメタ色に見えます。

どちらもサビ・塗膜はきちんと落ちます。見た目をそのまま活かしたい部品はパルス、広い面積や厚いサビを速く落としたい作業はCWが向いています。

写真で見る仕上がりの違い

赤サビの出た縞鋼板を、パルスとCWで半分ずつ洗浄したサンプルです。周りの赤茶色の板が、洗浄前の状態です。

縞鋼板のサビ取りサンプル全体

写真1:サンプル全体。 下半分のシルバーがパルス、上半分のガンメタ色がCWです。どちらも縞模様の際までサビが落ちています。

パルスで仕上げた面

写真2:パルスで仕上げた面。 細かく均一な金属の地肌が出ています。縞模様の角も溶けず、元の形のまま残っています。

パルスとCWの境目

写真3:境目の拡大。 右下のシルバー(パルス)は金属地の明るい色です。左上のガンメタ色(CW)には、青黒い色むらが見えます。

なぜ色が違うのか

色の差は、汚れを落とすときに母材の表面がどれだけ熱くなるかで決まります。

  • パルス(PLC): ナノ秒(10億分の1秒)単位の短い光を、1秒間に数万~数十万回当てます。一発ごとの瞬間的な力でサビや塗膜をはじき飛ばし、母材に熱がたまる前に次の光に移ります。表面が溶けず酸化もしにくいため、金属のシルバーがそのまま出ます。
  • CW(LCW・CLC): 光を途切れなく当て続け、その熱でサビや塗膜を焼き飛ばします。表面が高温になるため空気中の酸素と反応し、ごく薄い酸化膜ができてガンメタ色に見えます。条件によっては表面がわずかに溶けて固まり、光沢のないマットな質感になります。

写真のCW面に出ている青黒い色むらは、熱の入り方の差で酸化膜の厚さが変わったものです。サビの取り残しではありません。

CWでできる酸化膜の性質

CWレーザーでできるガンメタ色の膜は、黒サビ(四酸化三鉄)を主とするごく薄い酸化膜です。レーザーの熱で鉄の表面が空気中の酸素と反応してでき、母材にしっかり密着しています。

  • 赤サビとの違い: 赤サビはすき間の多いもろい酸化物で、水や酸素を通して内部までサビを広げます。黒サビは緻密で、母材から浮きません。南部鉄器の鉄瓶も、焼いて表面に黒い酸化膜をつけることでサビを防いでいます。
  • サビにくさ: 酸化膜に覆われた面は、洗浄直後のむき出しの鉄に比べて、赤サビ(戻りサビ)が出にくくなります。CWレーザーで炭素鋼のサビを落とした研究では、表面に薄く溶け直した層ができ、耐食性が上がったと報告されています(Wu ほか, 2023、Li ほか, 2020)。ただし防錆塗装の代わりにはならず、雨ざらしや水がかかる場所では、いずれ赤サビが出ます。
  • 塗装直後の食いつき: レーザーの熱で表面の色が変わった鋼板にそのまま塗装した試験で、塗膜の付着力(プルオフ法)は7.0MPaでした。ブラスト処理(Sa3:6.7MPa、Sa2½:7.8MPa)と同等で、はがれたのは下塗り塗膜の内部でした(土木研究所)。
  • 塩分はブラストより落とせる: 酸化膜をつくるのと同じレーザーの熱で、サビの奥の塩分も飛ばされます。塩害でサビた鋼板では、残った塩分がレーザーで0.0mg/m²、サンドブラストで35.4mg/m²でした(トヨコー・土木研究所, 2023)。
  • デメリット① 塩害環境では塗膜が長持ちしにくい: 酸化膜を残したまま重防食塗装をした鋼板は、促進試験850サイクルで塗膜にふくれが出ました(トヨコー・土木研究所, 2023)。九州大学の研究でも、CWレーザーでできる酸化スケールが塗膜の付着の課題になったと報告されています(Cai ほか, 2025)。塗装直後の食いつきに問題はありませんが、塩分と水分に長くさらされる場所では、下の「酸化膜の対策」が必要です。
  • デメリット② 金属の地肌の色にはならない: 仕上がりはガンメタ色で、熱の入り方によって青黒い色むらが出ます。洗浄した面をそのまま見せる部品や、金属の光沢を残したい部品には向きません。

酸化膜の対策

塩害を受ける屋外で塗膜を長持ちさせるには、塗装前に酸化膜を落とすか、洗浄のときに酸化膜をできにくくします。落とす方法は動力工具とパルスレーザー、できにくくする方法は窒素ガスのシールドです。

  • 長期の耐久性には酸化膜の除去が必要: 塩害でサビた鋼板に酸化膜を残したまま重防食塗装をすると、促進試験850サイクルで塗膜にふくれが出ました。CWレーザー工法(CoolLaser)を開発したトヨコーは、この青黒い酸化膜を塗膜の耐久性に悪影響を与えるおそれのある課題としています。そこで、レーザーのあとに動力工具で酸化膜を落とす「ハイブリッド工法」を考案し、850サイクルでもブラストと同等の耐久性を確認しています(トヨコー・土木研究所, 2023)。土木研究所の試験でも、レーザーのみの面より、レーザー後にディスクペーパーで仕上げた面のほうが防食性が高い結果でした(土木研究所)。
  • パルスレーザーで酸化膜を落とす(当社の対策): 動力工具の代わりに、パルスレーザーで酸化膜を落とすこともできます。当社の試験で、CWレーザーでできたガンメタ色の酸化膜を、パルスレーザー(PLC)で除去できることを確認しています。CWで厚いサビを速く落とし、パルスで酸化膜を取って金属の地肌に仕上げる、2台の使い分けです。
CWでできた酸化膜をパルスレーザーで除去した面

写真4:パルスレーザーで酸化膜を落とした面(赤枠内)。 周りのガンメタ色の部分は、CWで洗浄したままの状態です。赤枠内だけをパルスレーザーで仕上げると、酸化膜が取れて金属の地肌のシルバーになりました。

  • 窒素ガスで酸化膜をできにくくする: CWレーザーで洗浄するときに、窒素ガスをシールドガスとして母材に当てる方法です。熱くなった表面が空気中の酸素に触れにくくなり、酸化膜ができにくくなります。焦点距離800mmのレンズではワークから離れて照射するため、レーザーヘッドから出る窒素が母材まで届きません。ブローガンなどで、母材に窒素ガスを直接吹き付けてください。
  • LCWは溶接用焦点レンズ+窒素ガスで酸化膜ができにくい: LCWに溶接用焦点レンズ(焦点距離150mm)を付けて洗浄すると、レーザーヘッドの先端がワークに近いため、ヘッドから出る窒素ガスが照射部分を覆います。そのため、ブローガンを使わなくても酸化膜ができにくくなります。ただし、この使い方は照射幅が最大30mmで、軽いサビ取りや焼け取り向きです。厚いサビや塗膜の剥離には、洗浄用焦点レンズ(F800)を使ってください。
  • 塗装前の注意: 表面に粉状の焼けカスが残っている場合は、エアーや布で取り除いてから塗装してください。屋外の鋼構造物など塩害を受ける場所では、レーザーのあとにディスクペーパーやカップワイヤ、またはパルスレーザーで酸化膜を落としてから塗装してください。

比較表

仕上がり重視ならパルス、スピードと厚いサビならCWが有利です。

項目パルス(PLC)CW(LCW・CLC)
仕上がりの色金属本来のシルバーマットなガンメタ色(薄い酸化膜)
母材への熱少ない多い
母材の表面ほぼ元のまま条件次第でわずかに溶ける
薄板・精密部品向いている熱での歪みに注意
厚いサビ・厚い塗膜時間がかかる得意
広い面積の作業スピード遅め速い

用途別の選び方

洗浄した面がそのまま人の目に触れるかどうかが、選ぶときの一番の目安です。

  • パルス(PLC)が向く作業
    • 洗浄した面をそのまま見せる部品(ステンレス、アルミなど)
    • 金型や精密部品など、寸法や表面を変えたくないもの
    • 熱で歪みやすい薄板
  • CW(LCW・CLC)が向く作業
    • 鋼構造物や大型部品の、広い面積・厚いサビの除去
    • 塗装や溶接の前処理など、あとで表面が隠れる作業
    • 古い塗膜を短時間で剥がしたい作業

LCWは溶接機ですが、サビ取りにも使えます。溶接前の下地処理と溶接を、1台でこなせます。

注意事項

  • 写真は、赤サビの出た縞鋼板での一例です。仕上がりの色は、出力・当てる速さ・材質・サビの厚さで変わります。
  • パルスでも、周波数を下げたりパルス幅を長くしたりして強く当てると、熱が入って色がくすむことがあります。
  • 仕上がりが問題になる部品は、実際の材料でテスト洗浄してから機種をお選びください。

出典

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