株式会社リンシュンドウのスタッフの岡本です。 前回の「データファイルの違いよるチタン印鑑彫刻」に続き、今回は石印材をUVレーザー彫刻機 RSD-SUNMAX-UVZH-3W で加工し、石材印鑑を製作して検証します。
UVレーザー彫刻機とファイバーレーザー彫刻機の加工手法の比較
レーザーの波長が異なる等、仕組みや技術的な話は脇に置き、実際に加工を行う上で手法について説明します。
・いずれの加工においても、繰り返し加工を行いながら少しずつ彫り進んでいく、というのは同じです。繰り返し回数によって彫りの深さが変化します。
チタンの彫刻の場合は、レーザーパワーが強すぎたり、あるいは彫刻速度が遅すぎるとレーザー照射スポットが荒れて、彫れません。そのため適切な設定で繰り返し加工を行います。
石材の場合も同様に強すぎると、 レーザースポット の破砕面積が大きくなり、細微な加工ができません。また、逆に弱すぎると、レーザーを当てても全く跡がつきません。
どちらの場合も適切な設定で繰り返し加工を行う必要があります。
・石材、チタン印材とも、加工の手法は同じですが、石材はチタンとは異なった観点から加工を制御する必要があります。
① チタン印材は材質的なばらつきが少なく、印材の差異に関係なく、常に同じ加工設定で加工できます。仕上がりはとても安定しています。
対して石材は、水晶を始め様々な種類があり、その特性が異なります。ひとくちに水晶、瑪瑙と言っても、色などの違いにより様々な種類、呼び名があり、異なった加工結果(彫りの深さ)になります。そのため、透明な水晶と黄水晶は繰り返し加工回数が異なり、ローズクォーツもやはり異なります。そのため、印材の種類・呼び名に合わせて、加工設定(繰り返し回数)を変更する必要があります。
また、石材印材はその組成が一様ではなく、印材自体、あるいは印面の場所により硬さが異なる場合があります。
② 石材の彫刻は、焦点距離のズレに対して非常に敏感に反応します。材質によって大きく異なりますが、重ね加工により彫進み、ある一定の深さになると、それ以上どれだけレーザーを当てても全く深くなっていかない、という状況になります。そのため、加工途中で焦点距離を縮めてやる必要がある場合があります。
データ、印材および設定について
データについて
aiファイル形式のアウトラインデータと、600dpi相当のモノクロビットマップデータで行いました。
印材について
Φ (白)水晶・トラ目・ニューキャッツアイについて行いました。
設定について
以下の加工設定の項目は、すべての加工で共通です。
・ペンの「繰り返し」 : 10
・速度 : 100 [mm/s]
・電流 : 1 [A]
・周波数 : 20 [KHz]
・Qパルス幅 : 1 [μs]
aiファイル加工時 固有の設定
・ハッチングの「線の間隔」 : 0.03
※ 塗りつぶしの走査間隔です
モノクロBMPファイル加工時 固有 の設定
・加工の解像度 : X、Yとも600dpi
※ 設定はBMPファイルの解像度と同じにしました
加工結果
水晶 Φ15 aiファイル
加工の繰り返し回数「総計」: 8
加工時間 49分20秒
水晶 Φ15 モノクロBMPファイル
加工の繰り返し回数「総計」: 8
加工時間 67分28秒
トラ目 Φ15 aiファイル
加工の繰り返し回数「総計」: 2
加工時間 12分20秒
トラ目 Φ15 モノクロBMPファイル
加工の繰り返し回数「総計」: 2
加工時間 17分26秒
ニューキャッツアイ Φ15 aiファイル
加工の繰り返し回数「総計」: 6
加工時間 35分48秒
ニューキャッツアイ Φ15 aiファイル
加工の繰り返し回数「総計」: 6以上
ニューキャツアイのBMPファイルをaiファイルと同じ加工回数で彫刻したところ、非常に彫りが浅い状態になりました。
そこで何度も重ね彫りを繰り返しましたが、加工面のレーザー照射による粉砕音や薄い煙などは出ていて、彫れている感じはするのですが、全く深くならない状態になりました。
そこで加工設定等、条件を変えていろいろと試してみたところ、彫刻の解像度の上げる(細かくする)と、彫り進められることがわかりました。
彫刻の解像度を600dpi→1000dpiに変更して加工したものが以下です。深く彫ることができました。
彫刻の解像度 : 1000dpi
加工の繰り返し回数「総計」: 6
加工時間 86分12秒
まとめ
機体付属の印鑑作成用マニュアルは、アウトラインデータファイルの印面データをもとに製作することが前提であり、モノクロビットマップファイルを使用する手順ではありません。
アウトラインデータとモノクロビットマップなどの画像データとでは、レーザー加工の動作が異なり、加工設定も別のパラメータにより行います。そのため加工内容、結果は異なったものとなります。
・aiファイルの場合と比較して、モノクロビットマップなどの画像を使用した加工は、加工時間が長くなります。
・画像ファイルを加工する場合、加工素材によっては深く彫れない場合があります。その時は、解像度の設定を変更すると深く彫れます。
現実的には、画像データの解像度に関わりなく、1000dpi程度以上で加工するほうが良いと思われます。
・600dpiのモノクロビットマップファイルであってもaiファイルと同様に、印面の作製は可能です。