RD1290の出力曲線と出力マッピングについて

株式会社リンシュンドウスタッフの岡本です。前回の「LT6040ST908の諧調彫刻 」ではレーザー出力計を使用して実際のレーザー出力値を測定した上で、諧調彫刻が綺麗にできる設定を探しました。

今回は、RD1290を使用して諧調彫刻について試行します。

RSD-SUNMAX-RDシリーズ用の制御用ソフトウェアRDWorksV8は、前回のテストで使用したLT6040ST908用の制御用ソフトウェアLaserWorkV6とは外観はよく似ていますが、いろいろと仕様や動作が異なっています。
RDWorksV8には、LaserWorkV6には無い機能があり(またその逆もあります)、その一つが「出力マッピング」機能です。

「出力マッピング」機能とは、加工設定の出力設定値に対して補正を行う機能で、10%ごとに指定できます。例えば、出力設定が50%のときに実際には60%で出力する、という補正が可能です。

前回のテストでも明らかになったように、出力設定値と実際のレーザー出力値は比例していません。今回は「出力マッピング」機能により、出力グラフが直線になるように設定してみます。

※ 「出力マッピング」は諧調彫刻に特化したものではありません。レーザー管の特性に合わせてレーザー出力値を補正し、加工品質の向上を図るための機能です。
「出力マッピング」の設定を行う場合、機体のレーザー出力を実測する必要があります。適切な設定を行うにはレーザー出力を測定するという手間のかかる作業が必要になるため、通常は使用されていません。

「出力マッピング」機能を使用する前に、実際のレーザー出力値を測定します。なお、使用する機体は2013年製のGS1290をRD1290に改造したもので、ゴム印の製作などに日々使用されている機体です。レーザー管は1年半ほど前に交換されています。

測定結果

いろいろと興味深い点がありますが、傾向としては、LT6040ST908と同じです。
出力設定値が90%を越えたあたりから急激に出力が低下するのが特徴的です。普通はこのあたりの出力が不安定になるので、この低下は不安定さのバリエーションのような感じだと思います。

出力マッピングの設定

それでは、出力マッピング設定をします。出力マッピングは、RDWorksV8のメニュー【設定】-【システム設定】をクリックして表示される【パラメータ設定】ダイアログで行います。左ペインの【最適化】をクリックし、表示される【出力マッピング】ボタンをクリックすると「出力マッピング」ダイアログが表示されるので、そのダイアログで設定を行います。

【出力マッピングの有効化】にチェックを入れて、設定を行います。

左列の「設定値」が加工設定の最大出力/最小出力の設定値です。
右列が、「設定値」で加工する場合に、実際の出力を何%に補正するか決めます。

まず設定値が10%の場合と100%の場合の設定値を測定結果を参考にして求めます。

設定が100%の時、最大出力になるようにしたいので、測定結果から70%が最も適切であると考えられます。70%を越えると出力の上昇が止まり、出力が不安定になります。

次に10%ですが、測定結果を見ると、最大で80[W]程度の出力になるので、10%は8[W]ということになります。測定結果の表から実際の出力が8[W]の時、設定値は16%あたりになっています。従って、10%のときの実際の出力値は16%に設定します。

この要領で、20%から90%の設定値を求めていきます。この作業は、測定結果グラフの縦軸の目盛り間隔を8%刻みにすると、容易になります。

図の縦軸の目盛りに対応する横軸の値を確認すると設定値が決まります。

※ 設定値自体は0.1単位の数値を設定できますが。あまり細かく設定しても意味がないので、今回は1%単位で設定します。

設定値が20% 時、16[W]の出力が必要なので、横軸は20%になります。30%の時は22%、40%の時は25%になります。

このようにして、【出力マッピング】ダイアログの設定値をすべて入力します。

上図のように設定し、再度レーザー出力を測定しました。今回は10%刻みで測定しています。

出力マッピング設定時の測定結果

レーザー出力を補正すると、以下のような結果になりました。

ほぼ比例しています。

しかし出力設定値が60%のときに若干歪になっています。そこで、出力マッピングの設定値を修正してみます。60%の時の設定値は29%でしたが、これを30%に変更してみます。

出力マッピングを修正した測定結果

これでほぼ直線になりました。

結論

RDWoeksV8の出力マッピングを設定すると、加工設定と実際のレーザー出力がほぼ一致するようなります。

出力マッピングによる出力補正が、現実の加工においてどの程度有用なのかは議論の余地のあるところです。少なくとも切断加工においては、ほぼ無意味です。切断の場合の加工設定は、出力の調整ではなく、スピードで調整します。
また通常の彫刻加工においても、設定出しの際に多少やりやすくなるかもしれませんが、劇的な効果はありません。
諧調彫刻や傾斜彫刻をやる場合に出力マッピングの設定を行うことにより、加工品質が向上する可能性はあります。

付記

今回のブログ記事に使用したLT6040ST908 や RD1290 は水冷レーザー管を搭載しています。

一般的に空冷レーザー発振機を搭載したレーザー加工機は、水冷レーザー管を搭載したレーザー加工機と比較して、出力の安定度が高いと言われています。

今回は比較のため、空冷レーザー発振機を搭載したRSD-SUNMAX-RD7050RF-30Wのレーザー出力値も測定してみました。出力マッピング機能を使用しない状態で下図のような結果でした。

RSD-SUNMAX-RD7050RF-30Wの定格出力は30 [W]です。出力設定が60%で30[W]に達し。それ以降は安定しません。

30[W]に至るまでは、水冷レーザー管搭載機よりもバラツキが小さく、直線的に上昇します。出力マッピングを使用して、出力設定値が100%のときに60%の出力になるようにして等分で設定すれば、設定と実際の出力が一致した加工ができると思います。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする