LT6040ST908の諧調彫刻 ②

株式会社リンシュンドウスタッフの岡本です。「LT6040ST908の諧調彫刻 ①」 では、出力設定値が異なる四角形を並べて加工し、諧調表現が適切になる加工設定を求めました。
今回は、実際に写真の画像を加工して見て、確認します。

画像は、おなじみのサンプルピクチャー「コアラ.jpg」を使用します。

LaserWorkV6にインポートすると、自動的にモノクロ画像に変換されます。

インポート後、画像サイズ(加工サイズ)を幅120mm(高さは等比)に変更しています。

それでは、「LT6040ST908の諧調彫刻 ①」で最も適切であると思われた加工設定で加工してみます。

最低出力 : 4 .1 %
最高出力 : 40 %
スピード : 600 mm/s
走査方法 : 双方向
走査間隔 : 0.075 mm

残念な仕上がりです。確かに濃淡はあるものの、ぼんやりした感じでこれがコアラかどうかわかりません。

グラデーションの帯域を広げることと、加工結果の印象が異なる典型的な例です。

これはずいぶん前にブログでも紹介しています。
 ・風景写真 その1風景写真 その2風景写真 その3風景写真 その4

※ 2016年頃に作った記事です。ブログのプラットフォームはもともとFC2だったのですが、WordPressに変更した際に色々とおかしな状態になっていました。ひさしぶりに見てみるとリンクが切れていたり画像が小さくなっていたりしていたので、できる範囲で修正しています。しかし画像の解像度は粗いので分かりづらいですがご容赦ください。

風景写真シリーズは、PhotoShopを使用して写真画像をアミ化(ハーフトーンスクリーン)して、グラデーションの表現帯域を広げ手加工するようにしたものです。当時の弊社のレーザー加工機は諧調彫刻に対応していなかったため、写真はすべてアミ化して加工しています。

現在販売中のCo2レーザー加工機(RDシリーズ、LT6040ST908)は諧調彫刻に対応しており、画像データの濃淡により出力を動的に変更できます。

そこで今回の諧調彫刻の紹介なのですが、アミ化する手間が省ける諧調彫刻で、グラデーションの表現帯域を最大化した設定で加工すると、以前のアミ化の場合と同じでメリハリのな仕上がりになってしまいました。いつか通った道です・・・。

というわけで、どうすれば諧調彫刻の加工品質を上げられるか検討します。

焦げ色の微妙な変化だけではうまく加工できない、ということで、グラデーション帯域を逸脱して「彫る」必要があります。

また、四角形を加工していたときは同じレーザー出力値が集まって形成されていましたが、実際の画像は、強弱が常に変化して加工を行うため、周囲の焦げ具合に影響され続け、色の強弱が平均化されてしまいます。画像のコントラストを上げても効果はあまり期待できないので、「LT6040ST908の諧調彫刻 ①」の知見から離れる必要があるかもしれません。

それでは「LT6040ST908の諧調彫刻 ①」の設定を踏襲して、加工スピードを下げます。当然スピードを下げると、マーキングレベルの焦げ色の変化ではなく、彫り込むことになります。

基準の設定は下記です
 最低出力 : 4 .1 %
 最高出力 : 40 %
 スピード : 600 mm/s
 走査方法 : 双方向
 走査間隔 : 0.075 mm

① スピードを400 mm/sに下げる

もともとのスピード600 mm/s と比較すると多少マシにはなっていますが、まだまだダメです。

② スピードを300 mm/sに下げる

はっきりコアラとわかります。ただ色が薄くて輪郭がぼやけた感じになってます。

③ スピードを200 mm/sに下げる

それなりにコントラストがしっかりしていて、いい感じです。黒く塗りつぶしになってしまっている部分は、凹凸が判別できる程度に彫り込まれています。

④ スピードを100 mm/sに下げる

加工時に発生した煤が多量に付着してかなり黒いですが、多少の濃淡と凹凸感でコアラは判別できます。

⑤ 最大出力を90%、スピードを400 mm/sに設定する

 最低出力 : 4 .1 %
 最高出力 : 90 %
 スピード : 400 mm/s
 走査方法 : 双方向
 走査間隔 : 0.075 mm

これは黒くなりすぎてよくわからない感じです。やはり加工設定の最大出力と最小出力は、グラデーションの帯域の範囲内で設定したほうがいいようです。

⑥ 走査間隔を0.025 mm、スピードを800 mm/sに設定する

 最低出力 : 4 .1 %
 最高出力 : 40 %
 スピード : 800 mm/s
 走査方法 : 双方向
 走査間隔 : 0.025 mm

走査間隔を小さくしても解像度が高くなるわけではなく、ぼやけた感じになります。細部を観察すると、結構細かく濃淡が出ているのですが、全体の印象としてはよくありません。

⑦ 画像編集-ディザ

次は比較のため、諧調出力をやめて、アミ化して加工してみます。
LaserWorkV6の「画像編集」を使用して画像をアミ化します。線数は一般的な60にします。

加工設定は下記です。
 最高出力 / 最低出力 : 40 %
 スピード : 600 mm/s
 走査方法 : 双方向
 走査間隔 : 0.05 mm
直接出力 : チェックなし

細かい部分の表現としては、諧調出力よりも明らかに上ですね。加工結果を見ると、立体感が感じられます。
しかしパッと見の印象としては、「③ スピードを200 mm/sに下げる」の仕上がりのほうがコントラストが高く、力強く見えます。

※ アミ化した画像を加工するときは、設定出ししてきれいに加工できる設定を探さなければなりません。今回は設定出しせずに、だいたいの設定で加工しています。設定出し作業をすると、もう少しきれいになると思います。

⑧ 画像編集-ドット

最後に、画像編集のドットで加工してみます。「ドット」は水冷レーザー管を搭載するレーザー加工機ではあまり仕上がりが良くないので使用しません。空冷のレーザー加工機は写真加工を行うときドットで加工します。

加工設定は下記です。
 最高出力 / 最低出力 : 40 %
 スピード : 600 mm/s
 走査方法 : 双方向
 走査間隔 : 0.05 mm
直接出力 : チェックなし

アミ化したデータの加工と比較すると、濃い部分と薄い部分がはっきり出ていて、のっぺりした感じになります。アミ化データと白黒2値での加工した結果の平均をとった感じです。

まとめ

諧調出力で写真を加工する場合は、下記のように設定するとそれなりに画像内容が仕上がりになります。
今回は40Wのレーザー加工機でテストしましたが、出力が異なるレーザー加工であってもほぼ同じ傾向だと思われます。

・グラデーションが表現できる範囲の出力設定で最大出力と最高出力を設定します(0~40程度)。

・走査間隔は細かくしすぎない。0.075を基準にします。

・スピードの設定で仕上がりを調整します。より出力が強いレーザー加工機は、よりスピードを上げる必要がありますが、焦点位置の変動や応答速度などの関係で設定出しが難しくなると思われます。

以上 岡本でした。

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